財務・会計 ⑨初級編_企業価値評価_6問〜10問

問6:負債比率が高い企業において、WACCを用いてDCF法を行う際、株主価値の算定に注意すべき点はどれか。

  • A:負債コスト(節税効果)が株主資本コストを引き下げる効果を反映し、過大評価を避けること
  • B:負債は無視して株主資本だけで計算すること
  • C:企業価値をそのまま時価総額とすること
  • D:減価償却費を無視すること
  • E:売上高成長率だけを使うこと
【第6問:正解と解説】

正解:Option_A
【解説】
・A:負債比率が高い場合はタックスシールド効果によりWACCが低くなり企業価値が高く算出される傾向があるためその後の株主価値算定では純有利子負債の正確な控除と過大評価リスクへの注意が重要であるため適切。
・B:負債の節税効果はWACCを通じて企業価値に影響するため無視すると正確な評価ができないため不適切。
・C:企業価値(EV)と時価総額(株主価値)は純有利子負債分だけ異なるためそのまま等置することは誤りであるため不適切。
・D:減価償却費はFCFの算定に不可欠な調整項目であり無視すると誤った値になるため不適切。
・E:売上高成長率はFCF予測の一要素に過ぎずWACC・ネットデット等の全要素を考慮する必要があるため不適切。


問7:企業価値評価において「少数株主持分(非支配持分)」を考慮する必要があるケースはどれか。

  • A:単体企業を評価する場合
  • B:負債がない企業を評価する場合
  • C:連結子会社を持つ企業を評価する場合
  • D:配当を出さない企業を評価する場合
  • E:赤字の企業を評価する場合
【第7問:正解と解説】

正解:Option_C
【解説】
・A:単体企業の評価では子会社は存在しないため少数株主持分の考慮は不要であるため不適切。
・B:負債の有無は少数株主持分の考慮要否と直接関係しないため不適切。
・C:連結財務諸表では子会社の少数株主持分(親会社以外が保有する持分)が純資産に計上されるため連結EVから親会社株主に帰属する価値を求めるには少数株主持分を差し引く必要があるため適切。
・D:配当の有無は少数株主持分の計上とは無関係であるため不適切。
・E:赤字かどうかも少数株主持分の考慮要否とは直接関係しないため不適切。


問8:CAPMを用いて株主資本コストを算出する際、ベータ値(β)が1.0の企業が市場全体と逆の動きをすることはないと言える理由はどれか。

  • A:βは市場ポートフォリオとの共分散を示す指標であり、1.0であれば市場と同じ感応度を持つから
  • B:市場の動きとは無関係だから
  • C:リスクプレミアムがゼロだから
  • D:ベータは売上高の変動を示すから
  • E:企業価値には影響しないから
【第8問:正解と解説】

正解:Option_A
【解説】
・A:ベータ値は市場ポートフォリオとの相関係数に標準偏差の比率を乗じたものでありβ=1.0は市場と同じ方向・同じ大きさで変動することを示すため逆方向の動きは定義上生じないことを正しく説明しており適切。
・B:ベータ値が定義できる時点で市場との相関関係が存在するため無関係とは言えないため不適切。
・C:β=1.0の場合のリスクプレミアムはゼロではなく市場リスクプレミアム×1.0となるため不適切。
・D:ベータ値は株価と市場指数の連動性を示すものであり売上高の変動を示す指標ではないため不適切。
・E:ベータ値は株主資本コストを通じて企業価値に直接影響するため無関係とは言えないため不適切。


問9:DCF法において、事業計画の「予測期間(Explicit Forecast Period)」終了後の価値を現在価値に割引く際、なぜ継続価値の現在価値が企業価値の大きな割合を占めることが多いのか。

  • A:予測期間のキャッシュフローがマイナスだから
  • B:割引率がゼロだから
  • C:成長率が永遠にマイナスだから
  • D:事業の存続期間が理論上無限であるため、長期的なキャッシュフローの累積が大きくなるから
  • E:利益が出ないから
【第9問:正解と解説】

正解:Option_D
【解説】
・A:予測期間のCFがマイナスであれば継続価値の重要性は高まるが一般的にはプラスであるため不適切。
・B:割引率がゼロなら現在価値と将来価値が等しくなるが実際にはWACCはプラスであるため不適切。
・C:成長率が永続的にマイナスなら継続価値は小さくなり割合も低下するため不適切。
・D:DCF法では企業が永続的に存在(ゴーイング・コンサーン)するという前提のもとで詳細予測期間(3〜10年)以降の無限期間のCFを継続価値として計算するため通常企業価値全体の60〜80%を継続価値が占めることが多いため適切。
・E:利益が出ない状態では継続価値も小さくなり割合は低下するため一般的なケースの説明としては不適切。


問10:企業価値評価において「シナジー効果」をDCF法に反映させる際、最も注意すべき点はどれか。

  • A:シナジーを最大に評価すること
  • B:シナジーの実現可能性を検証し、過度な楽観主義による評価の歪みを防ぐこと
  • C:シナジーが発生するコストを無視すること
  • D:シナジーは必ず発生すると仮定すること
  • E:シナジーを割引率に反映させること
【第10問:正解と解説】

正解:Option_B
【解説】
・A:シナジーを最大に評価することは過大評価リスクにつながり客観的な検証の逆方向であるため不適切。
・B:M&A等の評価においてシナジーは重要な価値源泉だが実現可能性・時期・コストが不確実であるため楽観的な予測に基づく過大評価を避けることが最も重要な注意点として適切。
・C:シナジー実現にはPMIコスト等の費用が伴うためコストを無視するとネット価値が過大評価されるため不適切。
・D:シナジーは必ずしも発生するとは限らず前提として確定的に仮定することはリスクがあるため不適切。
・E:シナジーはFCFの増分として反映すべきものであり割引率の調整では正確に評価できないため不適切。


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