財務・会計 ⑨初級編_企業価値評価_26問〜30問

問26:DCF法の前提として、事業継続が前提とされる「ゴーイング・コンサーン」が重要なのはなぜか。

  • A:企業価値は事業を続けることで生み出される将来のキャッシュフローの積み重ねだから
  • B:企業が倒産しても価値があるから
  • C:清算価値しか見ないから
  • D:株主がやめさせたがっているから
  • E:税法で決まっているから
【第26問:正解と解説】

正解:Option_A
【解説】
・A:DCF法は企業が永続的に事業を継続するという仮定のもとで将来FCFを無限期間にわたって予測しその現在価値を積み上げることで企業価値を算定するためゴーイング・コンサーン(継続企業の前提)はDCF法の理論的根幹として不可欠であるため適切。
・B:倒産・清算が前提の場合は清算価値評価(コストアプローチ)が用いられ DCF法は継続企業を前提とするため不適切。
・C:清算価値のみを見ることはDCF法の目的とは異なりゴーイング・コンサーンと矛盾するため不適切。
・D:株主が事業継続をやめさせたがっているかどうかはDCF法の前提の説明ではないため不適切。
・E:税法上の要件ではなく会計・財務の基本的な前提条件として定まっているため不適切。


問27:企業価値評価において「少数株主ディスカウント」を適用する論理はどれか。

  • A:株主が嫌うから
  • B:銀行が許さないから
  • C:非上場や支配権のない株式は流動性が低く、コントロール権もないため、時価より低い価格で取引されるから
  • D:計算が合わないから
  • E:市場が間違っているから
【第27問:正解と解説】

正解:Option_C
【解説】
・A:株主の個人的な感情は少数株主ディスカウントの論理的根拠にはならないため不適切。
・B:銀行の許可は少数株主ディスカウントの適用に関係しないため不適切。
・C:非上場株式や少数持分は①経営への参加権限が限定的②換金・売却が困難という二つの要因(コントロール権プレミアムの欠如・流動性の欠如)から支配株主よりも低い価値評価(ディスカウント)が適用されるという論理として適切。
・D:計算の整合性の問題ではなく株式の経済的性質に基づく概念であるため不適切。
・E:市場の誤りではなく流動性・支配権という経済的合理性に基づく評価調整であるため不適切。


問28:DCF法で「営業利益」をベースにFCFを算出する場合、法人税の考慮はどうすべきか。

  • A:法人税を無視する
  • B:法人税を足す
  • C:営業利益のまま計算する
  • D:営業利益から税引後営業利益(NOPAT)へと、法人税相当分を控除して計算する
  • E:税率は無視する
【第28問:正解と解説】

正解:Option_D
【解説】
・A:法人税を無視すると企業が実際に手元に残るCFを過大評価することになり企業価値の過大評価につながるため不適切。
・B:法人税を足すことはCFを増やす計算になり誤りであるため不適切。
・C:税引前の営業利益のままではFCFとして不正確であり税引後のキャッシュフローが評価の基礎となるため不適切。
・D:FCF=NOPAT+減価償却費-設備投資-運転資本増加というFCFの標準的な算定式においてNOPAT=営業利益×(1-法人税率)として税引後に換算することが企業が実際に自由に使えるCFを正確に算出するために必要であるため適切。
・E:税率はFCFの算定において法人税負担を適切に反映するための重要なパラメータであり無視することは不正確な評価につながるため不適切。


問29:企業価値算定における「割引率」の設定で、日本企業において一般的に使われるモデルはどれか。

  • A:利益を倍にする手法
  • B:過去の売上を使う手法
  • C:WACCを算出し、株主資本コストにはCAPMを用いる手法
  • D:銀行金利のみを使う手法
  • E:配当だけを使う手法
【第29問:正解と解説】

正解:Option_C
【解説】
・A:利益を倍にする手法は利益倍率法に近い簡易的な手法であり割引率の設定方法ではないため不適切。
・B:過去の売上を使う手法は将来CF予測の一参考にはなるが割引率の設定方法ではないため不適切。
・C:日本のコーポレートファイナンス実務においてはWACC(加重平均資本コスト)を割引率とし株主資本コストの算定にはCAPM(資本資産価格モデル)を用いることが標準的な手法として広く普及しているため適切。
・D:銀行金利のみを使う手法では株主資本コストが考慮されず WACCとして不完全であるため不適切。
・E:配当のみを使う手法は配当割引モデル(DDM)に近い考え方であるが標準的な割引率設定モデルとは異なるため不適切。


問30:DCF法において、「将来のキャッシュフロー」を予測する際、最も注意すべきバイアスはどれか。

  • A:計算が合わないこと
  • B:株価が下がること
  • C:負債が増えること
  • D:配当が減ること
  • E:過度な楽観主義(成長やマージンを高く見積もりすぎる)
【第30問:正解と解説】

正解:Option_E
【解説】
・A:計算ミスは技術的なエラーであり予測バイアスとは異なる問題であるため不適切。
・B:株価の変動はDCF法のCF予測の主要なバイアスとは異なる市場の問題であるため不適切。
・C:負債の変動は資本構成の問題でありCF予測時の主要なバイアスとは異なるため不適切。
・D:配当の変動はCFの使途の問題でありCF予測バイアスの主要な課題ではないため不適切。
・E:DCF法の最大の課題の一つは予測者の主観的なバイアスであり特にM&A・事業計画・投資評価において成長率や利益率を過度に楽観的に見積もることで企業価値が過大評価されるリスクが生じるため最も注意すべきバイアスとして適切。


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