問16:経常収支と金融収支の関係に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- A:誤差脱漏を無視すれば、経常収支と資本移転等収支の合計は金融収支に等しくなり、経常収支の黒字は対外純資産の増加(金融収支の黒字)に対応する
- B:経常収支が黒字でも、対外純資産は必ず減少する
- C:経常収支と金融収支は互いに独立に決まり、両者の間に会計的な関係はない
- D:経常収支の黒字は、外貨準備を必ず減少させる
- E:金融収支が黒字であることは、必ず経常収支が赤字であることを意味する
【第16問:正解と解説】
正解:A
・A
適切。誤差脱漏を無視すれば経常収支+資本移転等収支=金融収支となり、経常収支の黒字は対外純資産の増加(金融収支の黒字)に対応する。
・B
不適切。経常収支の黒字は対外純資産を増加させる方向に働くため、必ず減少するとする記述は誤りである。
・C
不適切。国際収支統計上、経常収支と金融収支は誤差脱漏を除いて会計的に結びついている。
・D
不適切。経常収支の黒字が必ず外貨準備を減少させるわけではなく、記述は成り立たない。
・E
不適切。金融収支の黒字は経常収支の黒字(対外純資産の増加)に対応しうるため、必ず赤字を意味するとする記述は誤りである。
問17:為替レートのオーバーシューティング(ドーンブッシュ・モデル)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- A:オーバーシューティングとは、為替レートが長期均衡値へ緩やかにしか近づかない現象を指す
- B:物価が短期的に硬直的であるため、金融緩和などのショックに対して為替レートが短期的に長期均衡値を通り越して大きく変動し、その後徐々に長期均衡へ戻る現象をオーバーシューティングという
- C:オーバーシューティングは、物価が瞬時に伸縮的に調整される場合に生じる
- D:オーバーシューティングは、為替レートが常に購買力平価に一致することを示す現象である
- E:オーバーシューティングは、財市場のみで生じ資産市場とは無関係である
【第17問:正解と解説】
正解:B
・A
不適切。オーバーシューティングは長期均衡値を一旦通り越して大きく変動する現象であり、緩やかにしか近づかないとする記述は誤りである。
・B
適切。物価の短期的硬直性のもとで、金融ショックに対し為替レートが一時的に長期均衡値を行き過ぎて変動し、その後長期均衡へ戻る現象である。
・C
不適切。オーバーシューティングは物価が短期的に硬直的であることから生じるものであり、瞬時に伸縮的に調整される場合とする記述は誤りである。
・D
不適切。オーバーシューティングはむしろ短期に購買力平価から乖離する現象であり、常に一致するとする記述は誤りである。
・E
不適切。オーバーシューティングは資産市場(金利・為替)の調整と物価の硬直性の相互作用で生じるため、資産市場と無関係とする記述は誤りである。
問18:国際収支段階説・国際収支の天井に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- A:「国際収支の天井」とは、経常収支の黒字が拡大しすぎて景気が過熱する状態を指す
- B:固定相場制のもとで景気拡大が輸入を増やしても、外貨準備の制約が景気拡大の障害になることはない
- C:かつての固定相場制の日本では、景気拡大が輸入増加と経常収支の悪化を招き、外貨準備の制約から金融引き締めを迫られる「国際収支の天井」が景気拡大の制約となった
- D:「国際収支の天井」は、変動相場制のもとで特に強く作用する制約である
- E:国際収支段階説では、成熟した債権国は必ず貿易赤字・所得収支赤字になるとされる
【第18問:正解と解説】
正解:C
・A
不適切。「国際収支の天井」は経常収支の悪化と外貨準備の制約による景気拡大の限界を指すものであり、黒字拡大による過熱を指すものではない。
・B
不適切。固定相場制では景気拡大による輸入増が外貨準備を減らし、景気拡大の制約(天井)となりうる。
・C
適切。固定相場制期の日本では、景気拡大→輸入増→経常収支悪化→外貨準備の制約→金融引き締めという「国際収支の天井」が景気拡大の制約となった。
・D
不適切。「国際収支の天井」は外貨準備の制約が働く固定相場制のもとで強く作用したものであり、変動相場制で特に強いとする記述は誤りである。
・E
不適切。国際収支段階説では成熟した債権国は所得収支が黒字化する段階に位置づけられ、必ず所得収支赤字になるとする記述は誤りである。
問19:資本移動が完全な小国開放経済(変動相場制)のマンデル=フレミング・モデルにおける政策の有効性に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- A:変動相場制では財政政策が有効で、金融政策は無効となる
- B:変動相場制では財政・金融政策がともに完全に無効となる
- C:変動相場制では、輸入関税の引き上げによって所得を持続的に拡大できる
- D:資本移動が完全な変動相場制では金融政策が有効となり、財政政策は為替レートの変化(自国通貨高による純輸出減)を通じて効果が相殺されて無効に近くなる
- E:固定相場制と変動相場制で、財政・金融政策の有効性に違いは生じない
【第19問:正解と解説】
正解:D
・A
不適切。資本移動が完全な変動相場制では金融政策が有効で財政政策が相殺されるため、記述は有効・無効が逆である。
・B
不適切。変動相場制では金融政策が有効に働くため、両政策とも完全に無効とする記述は誤りである。
・C
不適切。変動相場制では関税引き上げによる純輸出改善が為替の増価で相殺されるため、所得を持続的に拡大できるとする記述は誤りである。
・D
適切。資本移動が完全な変動相場制では金融政策が有効であり、財政政策は自国通貨高による純輸出減を通じて効果が相殺され無効に近くなる。
・E
不適切。マンデル=フレミング・モデルでは為替制度によって政策の有効性が大きく異なるため、違いが生じないとする記述は誤りである。
問20:日本の経常収支構造の変化に関する一般的な理解として、最も適切なものはどれか。
- A:日本の経常収支黒字は、もっぱら貿易収支の大幅な黒字によって支えられている
- B:第一次所得収支は対外資産からの利子・配当を計上するが、日本では一貫して赤字である
- C:日本の第二次所得収支は、対外投資収益の増加により大幅な黒字が定着している
- D:経常収支は貿易収支のみで構成され、所得収支は含まれない
- E:日本の経常収支黒字は、貿易収支中心の構造から、対外純資産から生じる第一次所得収支(利子・配当等)の黒字が大きく寄与する構造へと変化してきた
【第20問:正解と解説】
正解:E
・A
不適切。日本の経常収支黒字はもっぱら貿易収支ではなく、第一次所得収支の黒字の寄与が大きい構造に変化している。
・B
不適切。日本の第一次所得収支は対外純資産の拡大を背景に黒字が定着しており、一貫して赤字とする記述は誤りである。
・C
不適切。対外投資収益は第一次所得収支に計上されるものであり、第二次所得収支(無償の移転等)は日本では赤字基調である。
・D
不適切。経常収支は貿易・サービス収支に加え第一次・第二次所得収支を含むため、貿易収支のみとする記述は誤りである。
・E
適切。日本の経常収支黒字は、対外純資産から生じる第一次所得収支の黒字が大きく寄与する構造へと変化してきた。

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